しくみとビジョン


つくばの最新技術情報を発信し、マーケットニーズ情報を収集、
そして生まれるイノベーション・新技術製品の創造


 

「カップリングによる新技術製品開発」とは何ですか。

「カップリングによる新技術製品開発」は、事業展開として「システムアッセンブリ」、「高性能製品の販売」と並ぶ、ルシールの3本柱のひとつです。「こんな技術ノウハウを持っています」という単なる情報の発信は、さまざまな企業が行なっています。当社の提唱する「カップリングによる新技術製品開発」とは、「技術開発にあたり、こういう部分で困っている」とのお客様に、「その分野であれば、この研究所の誰々さんが詳しいのでご紹介しますよ」とのアプローチを行なっていくことです。無論、当社の培ってきたノウハウで解決するケースならば、当社としても、オープンに情報を発信いたします。逆に、研究施設からは、事業化したい製品、技術の開発にあたり、有効なアプリケーションの提案や、必要とする企業とのマッチングも含めたマーケティングニーズ等の相談にも、しっかり応えます。

 
「カップリングによる新技術製品開発」は、どのような形で行なうのですか?

あくまで、各事業者様、各研究施設様とのフェイス・トゥ・フェイスでのやりとり、ということになりますね。その上で、当社が持つ情報を利用し、最も有効な組み合わせでの事業者側と研究施設等との橋渡しをします。カップリング、言葉を置き換えれば、ネットワークを活かして行なう組織同士のお見合いということです。しかし当社としては、仲人事業でビジネスをしようとは露ほども考えていません。科学の最先端が集中する筑波の技術、つまりはシーズを、マーケットのニーズに沿わせる過程で、具体的なエンジニアリングが必要になってくる。ルシールとしては、その部分をお手伝いしたいんです。

 
なぜ、このような活動を展開しようと考えたのですか?

つくばには、科学技術に関する国の予算が3分の2も投入されています。にもかかわらず、そこから生まれる技術を活用している企業は、地元に1社もない。これは普通に考えたら、ありえないことですよ。国の予算は言うまでもなく、我々国民が納めている税金。多額の税金が投入されている以上、きちんと有効に使い、世に還元する形でなければ困るじゃないか、と。そのためには、つくばが発信地となって、技術力および競争力の伴った商品を、どんどん打ち出していくべきなんです。そうじゃなければ、世の中自体がペイしていきません。だからこそ、この地を中心として、新しい商品を生み続けることで、産業の発信地にしていきたいんです。

 
なぜ、現在の状況は生まれてしまったのでしょうか?

企業サイドと研究施設側とのギャップを埋める役割が存在しなかったことが大きいと思います。企業サイドから見て、研究施設に何かを訊きたい場合でも、敷居が高いと感じたり、メーカーの看板を背負っていることが足かせになって、直接訪ねることができないんですね。逆に、研修施設側にしても「この技術は何かに使えないかな?」というところまでは考えても、企業サイドにアプローチしてマーケットニーズを聞くことはできていない。本当にもったいないと思いますよね。であるならば、ルシールが業務の活動の中から、ニーズを拾い、情報を集め、互いに必要とする者同士をカップリングしていきましょう、と。こういう動きを、それぞれの立場からされている方々もいらっしゃいますが、現在、目に見える成果にまでは至っていない。なら、私たちルシールも、その一員となり、実現するための裾野を広げていきたいと考えているんです。

 

現状の具体的な問題点とは、どんな部分なのでしょうか?

つくばに製作の現場である町工場がないということですね。研究施設と、職人さんたちが汗水たらして働いている現場が、距離感として、あまりにもかけ離れている点が大きいと思います。研究施設に納入される機器にしても、製作された現場のアイデアや苦労を、研究者は全く知ることすらなく、商社の人間が運んでくるものを何となく受け入れてしまっているんです。例えば、単純な数値を測る機器が、それまでのものとは二桁違う精度の高さで完成した、値段は人件費がかかっているので2千万円です、と。それは、その研究にとって本当に必要なのか? 必要に応じたスペックで、もっと安く有効なものとしてつくれたんじゃないか? と思うような浮世離れしたことが多過ぎるんです。そばにいて「こんなの、できませんよ」と言える職人さんがないから、起こってしまうことなんです。研究施設と、エンジニアリングの現場であるメーカーが、一緒に考えて、最善の策を見出していくためには、どうしたって架け橋になる存在が必要。それにはウチのような、草の根的に動けるポジションが適任だろうということです。
 
「カップリングによる新技術製品開発」の構想を持ったきっかけとは?
約6年前に施行された「独立行政法人化」があったからです。それまで国立の研究所で、専門の研究を続けられるはずだった環境が、急に生産性や、世の中への技術還元の効率性を求められるものに変わってしまった。ですが、そもそも大学機関や国立の研究施設というのは、生産性を追求する民間の機関とは異なり、それ以前のバックグラウンドをつくらなければいけない立場にあるんです。将来、何の役に立つかわからないけれど、「どうやら、こういうことがわかりそうだ」ということをやり続ける存在。そこから上がってきたシーズを用い、世に還元するためのエンジニアリングするのは民間の研究する側と、役割分担されるべきなんです。
 
全てが生産性を追求する体制になることで生じる問題とは?
国として、みんながエンジニアリングになってしまうのは、先進国としてはありえないことなんです。今はいいですよ。知識のストックがありますから。しかし、これ以上は知識が決して増えないということですから。他の国は、予算として苦しいながらも、未来に繋がる基礎研究は、ずっと続けている。であるならば、やがて諸外国との差がつき、そして広がってしまいます。日本という国全体として、極めて近視眼的な研究プランしか立てられなくなってしまった弊害が、これなんです。どんどんこの世界の裾野が狭いものに縮小していくでしょうね。
 
その現状に「カップリングによる新技術製品開発」は、どうかかわってきますか?
研究者にとって、自分のしたい研究というのは明確なものなんです。とはいえ、生産性重視の研究に従事せざるを得ない。ならば、その部分をスムーズに済ませることで、生じる時間や予算面の余力を、やりたい研究に充てることができます。そのためにこそ必要なポイントが「カップリングによる新技術製品開発」にあるのだとと、ルシールは考えます。
 
取材:2008年9月17日